涙もろい女帝 |  ◆ R I N G O * H A N

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歌うパステル画家5*SEASON鈴御はんの蒼いブログショー

ミンミンミーン。
セミの声。暑い暑い7月。
子どもたちは夏休み。

地下鉄にて。

汗ふきふき、スーツ姿の戦士がひしめく満員電車。
ため息の隙き間をぬって
無邪気な笑い声がこぼれてきた。
親子連れの姿がそこかしこ。
親にまとわりつきキャッキャッと はしゃぐ幼い子。
ああ、人はいつまで邪心なく、
安心しきって人に甘えられるのか。
あの親だって、汗だくのスーツ姿のおじさんだって、
かつてはそんな子どもであったのだ。
そう、この私も…。
ふいに目頭が熱くなる。
他愛無い風景をぼんやり見ているだけなのに、
ジワジワ・・・。アホかしらん。
地下鉄で涙目になってる女、気味悪いだろう。
失恋でもした風に見えるかも。

デパートの地下にて。

3歳ぐらいの女の子が床に這いつくばって泣いていた。
コケたのか、ゴネているのか、事情はわからないが、
ポケモンの黄色いパンツから むっちりした足が2本、
ジタバタジタバタ動いてる。
甲高い泣き声。転げ回る姿、
遠い日の私なら苛立ったろうに、
うふ。かわいい。笑えてきた。

銀座は和光の時計台前にて。

白髪頭で背中の丸いおじいちゃんが、
ランニング姿の少年の手を引いていた。
少年は小学校に入りたてぐらいだろうか、
真っ黒に日焼けした肩に水筒が斜めにぶら下がってる。
やばい。老人と少年ときたら、
映画じゃ“泣かせる王道”やないの! と思うやいなや、
「銀座も変わったのぉ…はて、どの道じゃったか…」
「おじいちゃん、僕、まだまだ歩けるよ」
ジワ…やはり涙。
ふたりの会話に、両の目から涙がにじみ出て、
炎天下の銀座、天下の和光前、
日傘の蔭でひとり忍び泣く女・・・・。

この朝。
タロットが私にくれたヒントは『女帝』。
このカードが私の母性本能を刺激したのか…。

『女帝』の基本的意味は妊娠や結婚、華やかなパーティー、
目標達成など、人生の喜びを示すけれど、
この日の『女帝』はリバース、逆さまに現れたので、
「達成」ではなく「母性」を示していたように思う、と
この日の夜、枕元の「走り描き日記」に残した。

「あんた異常やで。その涙もろさ!」
しかし、この話を妹に話したら呆れられ、苦笑されてしまった。
確かに。
涙腺、ゆる過ぎ。年々加速していく。
平凡な風景が、次々に掛替えのない感動へとかわっていき、
つい、小さなこと、小さな人たちに涙してしまうのだ。


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